Home > 最終段階

最終段階

  • 2011/03/25 22:04
  • Posted by : YUKI.N
「キョンプラス」制作も最終段階に突入した。
シナリオとグラフィックの下地はほぼできていたので、あとは効果音と人物の表情を入れていく作業となる。

思いの外、朝比奈みくるは興味深くこのゲーム制作に協力してくれた。
今日はわたしのマンションで泊まり込み作業だ。

コンピュータ研に協力を要請した前回のときは、泊まり込みの作業を行うことができなかったため、これは助かった。
パソコンやゲーム類が苦手といっていた朝比奈みくるは、それでも順応力があり、すぐに慣れて戦力になった。
Photoshopのソフトを動かす手を止めずに、テーブルの向かい側で彼女は言う。

「へぇ……すごい。レイヤーを組み合わせることによって、キョンくんの色んな表情が作れるんですね」

「バリエーションはいろいろある。彼の表情はあなたに任せる」

「あ、あたしにですか? うん……じゃあ、がんばりますね」

 しばらく黙々と作業。
 朝比奈みくるは、集中力があるのかないのか不明。うんうんうなっていたかと思えば、すぐに質問を投げてくる。

「ねえ、このキョンくんの立ち姿って、写真を撮って参考にしたんですか?」

「……古泉一樹の場合は容易にサンプル写真の撮影ができたが、彼はガードが堅い。とれなかった」

「じゃあ、え、えーと、隠し撮り……?」

「そんな無粋なことはしない」

「そ、そうよね……」

 夜が更けると、朝比奈みくるは台所に立って、夜食のサンドウィッチをつくってくれた。
 お茶が入ると、ふたりで向かい合って飲んだ。

 最初は反対するかと思っていたのに、すでに彼女は共犯者の顔をしていた。

「古泉くん、喜んでくれるかな」

Home > 最終段階

Page Top