- 2011/04/01 16:53
- Posted by : 古泉
放課後、教室で待っていてください。――みくる
下駄箱にしたためられたかわいらしい置き手紙に気づいたのは、朝、靴から上履きに履き替えた朝のことだった。
誰にも見られないように、ブレザーの内側にそっと便せんを隠す。
朝比奈さんにわざわざ呼び出されるとは、考えられる事項はそう多くはない。
涼宮さんに関連することだろう。
朝比奈さんが僕の知らないところで、厄介なトラブルに巻き込まれている可能性もある。
詳しい理由も告げられぬまま、急に三年前に連れて行かれたりするかもしれないのだ。
不謹慎かも知れないが、そう思うと授業を受ける僕の心は浮いた。
下駄箱にしたためられたかわいらしい置き手紙に気づいたのは、朝、靴から上履きに履き替えた朝のことだった。
誰にも見られないように、ブレザーの内側にそっと便せんを隠す。
朝比奈さんにわざわざ呼び出されるとは、考えられる事項はそう多くはない。
涼宮さんに関連することだろう。
朝比奈さんが僕の知らないところで、厄介なトラブルに巻き込まれている可能性もある。
詳しい理由も告げられぬまま、急に三年前に連れて行かれたりするかもしれないのだ。
不謹慎かも知れないが、そう思うと授業を受ける僕の心は浮いた。
部室に向かう前に、人気のなくなった一年九組の教室内に居残っていると、朝比奈さんが遠慮がちにドアからひょっこりと顔を出した。
敷居はまたがずにその場でぱたぱたと手を振る。
「古泉くん、お待たせしました」
ドア付近まで近づいていくと、朝比奈さんは後ろ手に隠していたものを笑顔で差し出してきた。
「いつも副団長のお仕事、お疲れさま。これ、あたしと長門さんからです」
それは、きれいに包装紙とリボンでラッピングされた、どこからどう見ても立派な贈り物だった。
とうにバレンタインも終了している。義理チョコ以外で彼女たちからなにかプレゼントされるとは、思いもよらなかった。
僕は面食らって、しばらく反応できなかった。
ふたりで会話しているところを想像できないが、いつのまにか、長門さんと朝比奈さんは僕の見えないところで交流を持っていたらしい。
団員同士が仲良く手を取り合うことは、悪いことではない。
特に、長門さんと朝比奈さんと僕の三人は、それぞれが異なる組織に帰属しているため、立場上、対立しなければならない時もある。
おそらく二人でお菓子を作ったものが余ったので、お裾分けをしてくれるのかもしれない。
それならば彼にも当然、同じものが贈られるのだろう。
僕は受け取りながら軽く頭を下げた。
「これは……驚きました。わざわざお気遣い頂き、ありがとうございます。大切に食べますよ」
「ううん、残念ながら、食べ物じゃないの」
「え、では……?」
「少しでも古泉くんが楽しんでくれればいいと思って……長門さんと一緒に作りました。中身は、おうちに着いてからゆっくり見てね。じゃあ、あたしは、先に部室に行ってますね」
9組の教室には一歩も入らずに、朝比奈さんは三歩下がった。
「これは古泉くんにだけなの。キョンくんには内緒ですよ?」
廊下の途中でくるりと振り返り、朝比奈さんはいたずらっぽく微笑んだ。
僕はぽかんと口を開けた。
「……朝比奈さん、これ、一体なんですか?」
「ふふ。帰ってから開けるまでは、禁則事項です」
人差し指を唇の近くに立てて、朝比奈さんは片目をつむった。
* * *
帰宅して気持ちが急くままに、すぐに朝比奈さんから受け取った贈り物を開封した。
それは、ニンテントーDSに対応したゲームソフトだった。
「……えええええっ!?」
パッケージデサインを見て、喉が飛び出すほど驚いた。
思わず一人で声を上げてしまったくらいだ。
ジャケットは、写真と見まごうばかりの(いや、写真かもしれない)彼の顔が大写しになっている。
所持しているDSの本体を引っ張り出して、すぐにソフトをセットした。
震える指で電源を入れる。
心拍数が跳ね上がるなかで、プレイを開始した。
GAME START
敷居はまたがずにその場でぱたぱたと手を振る。
「古泉くん、お待たせしました」
ドア付近まで近づいていくと、朝比奈さんは後ろ手に隠していたものを笑顔で差し出してきた。
「いつも副団長のお仕事、お疲れさま。これ、あたしと長門さんからです」
それは、きれいに包装紙とリボンでラッピングされた、どこからどう見ても立派な贈り物だった。
とうにバレンタインも終了している。義理チョコ以外で彼女たちからなにかプレゼントされるとは、思いもよらなかった。
僕は面食らって、しばらく反応できなかった。
ふたりで会話しているところを想像できないが、いつのまにか、長門さんと朝比奈さんは僕の見えないところで交流を持っていたらしい。
団員同士が仲良く手を取り合うことは、悪いことではない。
特に、長門さんと朝比奈さんと僕の三人は、それぞれが異なる組織に帰属しているため、立場上、対立しなければならない時もある。
おそらく二人でお菓子を作ったものが余ったので、お裾分けをしてくれるのかもしれない。
それならば彼にも当然、同じものが贈られるのだろう。
僕は受け取りながら軽く頭を下げた。
「これは……驚きました。わざわざお気遣い頂き、ありがとうございます。大切に食べますよ」
「ううん、残念ながら、食べ物じゃないの」
「え、では……?」
「少しでも古泉くんが楽しんでくれればいいと思って……長門さんと一緒に作りました。中身は、おうちに着いてからゆっくり見てね。じゃあ、あたしは、先に部室に行ってますね」
9組の教室には一歩も入らずに、朝比奈さんは三歩下がった。
「これは古泉くんにだけなの。キョンくんには内緒ですよ?」
廊下の途中でくるりと振り返り、朝比奈さんはいたずらっぽく微笑んだ。
僕はぽかんと口を開けた。
「……朝比奈さん、これ、一体なんですか?」
「ふふ。帰ってから開けるまでは、禁則事項です」
人差し指を唇の近くに立てて、朝比奈さんは片目をつむった。
* * *
帰宅して気持ちが急くままに、すぐに朝比奈さんから受け取った贈り物を開封した。
それは、ニンテントーDSに対応したゲームソフトだった。
「……えええええっ!?」
パッケージデサインを見て、喉が飛び出すほど驚いた。
思わず一人で声を上げてしまったくらいだ。
ジャケットは、写真と見まごうばかりの(いや、写真かもしれない)彼の顔が大写しになっている。
所持しているDSの本体を引っ張り出して、すぐにソフトをセットした。
震える指で電源を入れる。
心拍数が跳ね上がるなかで、プレイを開始した。
GAME START
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