押しかけ病人

※前に書いたこれの続きのような。

ピンポンピンポーン

キョン(こんな時間に……誰だよ)
古泉「僕です。開けてください、緊急事態です!」
キョン「……またハルヒがなんかやらかしたのか」

ガチャッ

古泉「ゲホゲホゴホッ」ドサッ
キョン「うお!? どうし……、ちょっ、何だよおまえ! ひどい熱だぞ!?」
古泉「風邪を引きました……ううぅ、めまいが……」
キョン「えらい重症っぽいな。そんな状態でここまで来るとは、今度は何だ。世界の危機か!?」
古泉「緊急事態なのは僕です」
キョン「は?」
古泉「正直立ってるのもツライです。今すぐ休まないと危険です」
キョン「確かにそうみたいだが……」
古泉「ね、緊急事態でしょう? だから看病してください」
キョン「……」

キョン「いろいろツッコみたいことはあるが……急に来られても俺にも家庭の事情ってヤツがだな」
古泉「あなたは1人で留守番のはずです。ご家族は2泊3日の旅行ですよね」
キョン「なっ!? 何で知っ……機関には筒抜けってワケかこのやろう」
古泉「あなたのご母堂が福引きで高級旅館招待券(3名様)を引き当てるよう細工したのは我々です」
キョン「仕事しろ機関! なんつー職権濫用だ!」
古泉「今やこの組織は僕とあなたの輝かしくも甘い未来のために全力で動いていますよ」
キョン「濫用どころじゃなかった! 私的占有か! 今すぐ解体しろ構成員全員即時リストラだ!」
古泉「まあまあ、ちゃんと世界平和のためのお仕事もしていますよ。そっちは全体の1割程度ですが」
キョン「少なっ! お前はもう病院行け。精神とか脳みそとかそっち方面のな」
古泉「週末は休診ですよ」
キョン「健康管理は徹底してそうなお前が何だってこんな風邪なんぞ……」
古泉「夕べ頭から水かぶって、そのまま全裸で扇風機の前に2時間ばかりいましたので」
キョン「はぁ!? まだ春先だってのになにやってんだ!」
古泉「あなたに看病してもらおうと思って」
キョン「わかった、おまえバカだろ」
古泉「何ですって! バカは風邪引かないんですよ! 風邪を引いた僕はバカじゃありません!」
キョン「バカだろ」
古泉「2度も言った!」
キョン「大事なことだからな」

古泉「あなたがそんなに冷血とは思わなかううっ、き、気持ち悪いです」ヨロヨロ
キョン「はあ……さすがに追い返すわけにもいかねえか。中入れ」
古泉「優しいですね!」
キョン「やれやれだ……」

キョン「とりあえず寝ろ」
古泉「……こ、これがあなたのベッド。いけません、熱がますます上がりそうです」
キョン「永眠するか?」
古泉「ありがたく使わせていただきます。その前にパジャマに着替えるんで風呂場お借りします。あ、この場で着替えてもいいですよ?」
キョン「とっとと行け」

キョン「言っとくが俺は料理とかできんぞ。滋養のあるもの作るとか無理だからな。薬もパブロンぐらいしかないし」
古泉「心配無用です、その辺は全部買ってきました。その袋の中です。おかゆのレトルトもあるので作ってください」
キョン「どんだけ準備のいい病人だ」
古泉「お世話になるのですから、これぐらいはしないと」
キョン「だったらそもそも風邪なんか引くんじゃねえよ」
古泉「冷えピタも入ってますから取ってください」
キョン「話聞け」

キョン「じゃあお粥あっためてくる」
古泉「待ってください。何故そんなあっさり部屋を出て行こうとするんです」
キョン「どういう意味だ」
古泉「僕を見て何か思うことはないんですか」
キョン「救いようのないバカが俺のベッドを占拠しているぐらいしか思うことはないが」
古泉「あなたおかしいですよ! 熱のせいで赤らんだ頬に潤んだ目で自分のベッドに横たわる僕を見たら、普通はムリヤリ唇を奪ってそのままイケナイ展開になだれ込むのが……って何してるんですか?」
キョン「いや、ちょっと」
古泉「……な、なんですかそのロープは! え、ちょっ、まさか、そ、そう言う趣味が!? す、すみません、僕まだハードなのは心の準備が。でもいずれは」
キョン「お前を布団ごと簀巻きにしてベランダに吊そうと思ってな」
古泉「ひどい!」

キョン「お粥できたぞ」
古泉「ゴホゴホッ……お、お待ちしてました!」ガバッ
キョン「意外と元気じゃねーか」
古泉「そんなことはありません。熱もありますよ、ほら」
キョン「……38℃か……。確かに高いが、意識ははっきりしてるな」
古泉「そんなことよりお粥を」
キョン「ほれ」

古泉「……」
キョン「……」
古泉「……」
キョン「……食わんのか?」

古泉「これはなんのつもりでしょうか」
キョン「お粥のつもりだが」
古泉「いやいや、なにを器ごと押しつけてるんですか。ここはふーふーあーんでしょう!」
キョン「てめぇでやれ」
古泉「うっ、めまいが……」
キョン「いらんのなら俺が食う」モグモグ
古泉「あああ! 食べます! 食べますから!」

古泉(モグモグ)
キョン「食えるじゃねーか」
古泉「あなたがいじわるするから仕方なく」
キョン「もっといじわるしてもいいんだが」
古泉「すみませんでした」モグモグ

古泉「あ」
キョン「なんだよ」
古泉「あなた、さっきこのスプーンでお粥食べましたよね。つまりこれって間接キ」
キョン「…………」
古泉「何でもないです。その振り上げた広辞苑をおろしてください」

古泉「ごちそうさまでした」
キョン「じゃあ薬飲め。効くかどうか知らんが」
古泉「くちうt」ベシッ!!
古泉「痛い! まだ何も言ってないでしょう! 病人に何するんですか!」
キョン「永遠に何も言えなくなりたいか?」
古泉「薬飲みます」

古泉「……眠くなってきました」
キョン「薬が効いてんだろ」
古泉「あ……」
キョン「なんだ」
古泉「あの、僕がベッド占領しちゃってますけど……」
キョン「俺は床に布団敷いて寝る」
古泉「いえ、僕が床で」
キョン「病人はベッドにいろ。床は冷える」
古泉「じゃあ、あなたも一緒に」
キョン「断固拒否だ。だいたい病人と一緒に寝るわけないだろ」
古泉「すみません……」

キョン「じゃあ電気消すぞ」
古泉「……」

カチ

古泉「……いろいろ申し訳ありませんでした」
キョン「何を今更」
古泉「自分勝手すぎましたね、本当に……。あなたに構ってもらうことばかり考えて、あなたの迷惑を考えていなかった。わざと風邪を引くなんて、あなたが断れないような状況に追い込んで……」
キョン「……もっと早く気付けよ」
古泉「ごめんなさい」

キョン「もう二度とこんなバカな真似はしないか?」
古泉「しません」
キョン「なら、いい。……古泉」
古泉「はい」
キョン「………あんまり、心配させんな」
古泉「……え? って……あ、あの顔がちk」

コツ

キョン「ん、少し熱下がったみたいだな」
古泉「……な、なな、なななんですか今のは……!?」
キョン「熱を測っただけだろうが」
古泉「そ、そう、そうなんですけど」
キョン「もし俺に風邪がうつったらお前看病しろよ」
古泉「は、はははいっっ!!」


ガチ受古泉第2弾。ボツネタ置場に放置してたんですが、ちょっと引っ張り出してみました。