1 - 古泉は「あらゆるゲーム」に弱いのか?
本日の団活は女性陣不在でお送りする。
ハルヒは家の用事とかでHR後早々に帰宅し、朝比奈さんは鶴屋さんと何やら約束があるのだとか。部屋の鎮守神長門はコンピ研に出張だ。
団員の過半数が欠席で、なにより朝比奈さんのお茶にもありつけない状況でこの部屋に特に用はないはずなのだが、家に帰ってどうしてもやりたいことがあるわけでもなく、すでに本能レベルにまで刷り込まれてしまった習性によって立ち寄った部室のドアを開けた先で俺と似たような境遇の男がすでにテーブルに将棋盤を広げていて、そいつの顔が俺を見るなり「お待ちしていました!」と言わんばかりのサニースマイルに切り替わったのを目視で確認してしまっては、無視して帰るには俺の中途半端なお人好し精神がちっとばかり邪魔をした。
やる前から勝敗がほぼ見えているゲームに毎回付き合う俺も大概人間ができている。
……さて本日の対戦も二枚落ちにしてやったにもかかわらず、予定調和と言うべき結末を迎えた。
団長ルール(敗者は絶対服従)に則って帰りにコンビニでジュースとコロッケでも貢がせようかと考えていると、
口だけはよく回る敗残兵がお得意の論考を始めやがった。こいつはどうしてこう理屈をこね回すのが好きなのかね。つまらんくだらんうざいと思いつつも、つい聞いちまう俺も俺だが……。
今回の古泉の無駄話はこんな感じである。
***
- 古泉
- ………投了です。
- キョン
- だいぶ前の手から勝敗は見えてた気がするが、諦めが悪いなお前も。
- 古泉
- はあ……上手くいかないものですね。
- キョン
- 特進クラス所属で、最新刊じゃ機関の首魁説に未来に対する脅威説まで飛び出したお前が、なんだってこんなにゲームだけは全面的にダメダメなのかね。なにか呪いでもかかってんのか?
- 古泉
- おっと、『全面的に』という部分は否定させていただきますよ。
僕があなたを相手に連戦連敗を喫しているのは、特定分野のゲームだけです。
- キョン
- なんだその特定分野ってのは。おまえはありとあらゆるゲームにズタボロという印象があるが。『全てのゲームに負ける男』って二つ名も持ってるだろう。
- 古泉
- それは『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』の方でしょう。あと『あらゆるゲームにズタボロ』という印象は二次創作の読み過ぎではないですかね。
- キョン
- そうかなあ。
- 古泉
- ゲームはゲームでもスポーツライクなものは、あなたより好成績です。たとえばアニメの『エンドレスエイト』ですが、ボウリングはご覧の通りのスコアです。
- キョン
- ……長門……遊んでるよなこれは……。
- 古泉
- 宇宙人なりのギャグなんでしょうかこのスコアは……。って長門さんじゃなくて僕のところ見てくださいよ。
- キョン
- え、あ、ああ。……確かにストライクもけっこうあるし、一投で倒すピンの数が多いな。だがそのぶん1,2ピン残しちまって、それを二投目でスペアにできてないあたりが詰めの甘いお前らしい。
- 古泉
- あなたはストライクこそ二回ですが、全体的にチクチク稼ぐという実にらしいスコアですね。
- キョン
- 余計なお世話だ。
- 古泉
- 他には『射手座の日』でも、僕はこの手のゲームに不慣れと言いつつ特にみなさんの足を引っ張ってはいません。少なくともあなたと同等レベルの戦力として扱われています。
- キョン
- 突撃バカのハルヒよりはよくやってたな。
「これは難しいですね。まあ僕がこの手のゲームに不慣れなせいかもしれませんが。シンプルですがマニアックな操作性です」
―射手座の日 p136
〈キョン艦隊〉と〈古泉くん艦隊〉の間に割って入ろうとする〈ハルヒ☆閣下☆艦隊〉を、俺と古泉は小魚の群れ並みに瞬時の連携で押し留めようとした。
―射手座の日 p150
俺は自艦隊を操って旗艦艦隊の進路を塞ぎにかかり、さりげなく古泉も反対側から同じ動き、
―射手座の日 p151